田頭拓己のブログ

田頭拓己のブログ

一橋大学大学院経営管理研究科専任講師。実証的なマーケティング研究。マーケティングに関する小咄や日々の出来事を記録します。

好き嫌いと良い悪いは区別しよう!

私はTwitterが好きです。タイムライン(TL)に流れるしょーもないネタを眺めたり、犬猫画像をRTしたり、専門家の意見を収集したりと、最高の暇つぶしです(暇つぶしが過ぎて仕事に支障が出ていないとは言いきれませんが…)。しかし、TL上ではたびたび炎上案件や、不毛かつ殺伐としたリプの応酬を目にすることもあります。そのようなやりとりを見ていると、すべてとは言いませんが、その多くで、個人の「好き嫌い」と物事の「良し悪し」を区別せず議論しているのではないかなと感じることがあります。

 

この「好き嫌いと良い悪い」という区分は、私が思いつきで言っているわけでも、湾岸ミッドナイトやツギハギ〜にインスパイアされたわけでもなく、マーケティングにおける製品の「垂直的属性」と「水平的属性」と呼ばれる考え方に基づいています。

 

マーケティングにおいて製品は多元的な属性(特徴)の束として捉えられます。例えば、ノートパソコンを買う際に多くの人が価格や、CPU(スペック)、耐久性、デザイン等のいくつかの属性の優劣や好みに基づいて製品を評価し、購買に至ると思います。これらの属性を全て挙げようと思えばきりがありませんが、これらの属性を大まかに二つに類型化するものが垂直的属性と水平的属性です。

 

垂直的属性とは、耐久性やPCの処理速度のように属性の優劣について全ての消費者間で同一の評価方法を持つ属性であり、製品の質の高低を表すものです。つまり、その上下関係(良し悪し)が判断できる特徴ということです。通常、垂直的属性の水準が高い場合にはその質の向上に伴い製造コストも高くなるため、価格も高くなります。

 

一方で水平的属性とは、色やデザインのように消費者ごとに希望する特徴が異なっている属性であり、製品のバラエティを表すものです。イメージとしては、上下関係ではなく、製品の特徴に関する幅が横に広がっている感じでしょうか。この特徴の変化は必ずしも製品の価格に繋がりません。例えば、Tシャツの色について、白でも黒でも価格は同じですし、白がいいか黒がいいかについてはそれを評価する人によるわけです。

 

企業のマーケティング戦略においても、垂直的属性についての差別化と水平的属性についての差別化は異なるものとして議論されます。興味のある方は私の講義ノートを参照してみて下さい。

 

私自身、個人の好き嫌いと物事の良い悪いが違うということを自覚し論点を整理することは、TL上での生き易さにつながると思っています。「これは個人の好き嫌いの問題だな」と思えれば、相手の話にも寛容になれますし、不必要に自分の「べき論」を他人に押し付けることも減るのではないでしょうか。そういう意味で、この「垂直的属性」と「水平的属性」は、私にとってマーケティングにおける好きな概念です。